食生活と密接に関連して起こるのが「肥満」です。肥満は消費するカロリーよりも食べるカロリーが高いために起こります。今まで脂肪は栄養の貯蔵庫と考えられていましたが、近年、脂肪細胞がつくる「アデイポカイン」というサイトカインの一種に注目されています。アデイポカインには炎症を引き起こす悪玉のTNF-αと長寿にかかわる善玉のアデイポネクチンがあります。
脂肪細胞から脂肪の中性脂質が分解され、脂肪酸が遊離されます。エネルギーを利用する過程で遊離脂肪酸が食細胞の受容体に結合すると、炎症を引き起こせという信号が出て、TNF-α産生が起こります。病原体が感染した場合には、排除されれば炎症は治まりますが、肥満ですと絶えず遊離脂肪酸が作られ、「炎症を起こせ!」という信号が出され続け、慢性炎症が起こります。TNF-α産生が多くなると、逆に善玉のアデイポネクチンが低下します。
2型糖尿病モデルマウス(KK-Ay)マウスでは、体重増加、血糖値が上昇し、アデイポネクチン量が低下します。KK-Ayマウスに発酵ぶどう食品K-FGFを投与すると、体重増加や血糖値の上昇が抑制され、善玉のアデイポネクチンの減少が抑えられ高い値を維持していました。
糖尿病は食生活を考え、運動によってエネルギーを消費するのが一番です。食後の血糖値の上昇を抑えるためにある程度の糖質制限を行い、血糖値スパイクがないようにファイトケミカルや水溶性食物繊維を摂取することも大切です。糖尿病は新型コロナ感染でも、重篤化し易いハイリスクグループに属します。
肝臓に肥満が溜まった脂肪肝ですが、近年、非アルコール性の脂肪肝に注目されています。脂肪肝は脂肪性肝炎→肝硬変→肝がんへと進行する場合もあるので要注意です。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)にならないようにすることが大事です。肝臓に炎症が起こりますので、線維化も起きてきます。
脂質異常症では、LDL-コレステロールが増加し、HDL-コレステロールが減少するため、LDLとHDLの比率が変化します。酸化したLDL-コレステロールが血管内の飽食細胞に取り込まれ、蓄積すると血流が悪くなり、高血圧の原因にもなります。また、アテローム型の動脈硬化になります。
玉ねぎやぶどうなどに含まれる、ケルセチンは動脈硬化にならないようにするという働きがあることが多くの論文で報告されています。
肝臓で作られたLDL-コレステロールは血管に運ばれ、HDL-コレステロールとして回収されます。コレステロールは胆汁酸やステロイドホルモンの原料となります。コレステロールの約50%が胆汁酸はとして腸内に放出される。十二指腸、空腸を経て回腸で大部分が再吸収される。腸肝循環である。ここに水溶性食物繊維があると再吸収されずに排出される。胆汁酸はTGR5という受容体に結合し、腸の蠕動運動を引き起こす。トリテルペンのオレアノール酸はTGR5に結合することができる。発酵ぶどう食品のK-FGFの主成分の一つがオレアノール酸であり、便秘の予防に役立っている。
ビタミンDとファイトケミカルズの摂取は、肝臓や血管内での炎症を抑制する働きがあることが報告されている。
次のような論文が紹介されています。
1) Adamらは、糖尿病性腎症の動物にぶどう種子ポリフェノール水抽出物を与えると、腎症による酸化ストレス、炎症、細胞死を予防し、腎機能を正常に機能することを明らかにした(Biomed Pharmacother 2016 81:439-52)
2)Okudanらは、糖尿病の実験モデルのラットにぶどう種子プロアントシアニジンエキスを6週間投与すると脂質過酸化を阻害することで酸化ストレスを軽減し、血管内非細胞の機能を回復させることを明らかにした(J Med Food 2011 14:1298-302
3)2型糖尿病による腎症をもつラットにぶどう種子プロシアニジンを投与すると、血中のHbA1c、CRP、腎臓中のTNF-α、MCP-1, ICAM1の値が改善した(Baoら、Mol Med Rep 2015 11:645-52).
4)Akaberiらはぶどう種子が血糖値、血圧、などメタボリック症候群に効果があることを報告した(Phytother Res. 2016 Jan 22.doi:10.1002/ptr.5570 ).
5)高果糖食をラットに与えると過トリグリセリド血症と脂肪肝になる。ぶどう種子プロシアニジンエキスを与えると、血清トリグリセリド量が減少し、コレステロールの排泄が促進され、肝臓への脂質の蓄積が減少しました(Downingら PLoS One. 2015 Oct 12;10(10):e0140267 ).
6)高脂肪食をラットに与えると脂質過酸化、カルボニル化、グルタチオンや抗酸化酵素の低下、亜鉛の激減が肝臓に表れ、酷くなると非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)になります。ぶどうの皮・種子エキスを与えると著しく改善しました(Charradiら Dig Dis Sci 2014 59:1768-78).